この幻のアルバムには多くの海賊盤が存在しますので、これまでも完成されたに近い姿をうかがい知ることが出来たのですが、nakaQの持っている盤と比較してもイメージはほぼ同じで、当時のコンセプトに忠実に制作されたと言えるのではないか、と思います。もちろん音質は非常にクリアで、ステレオですので、その意味でも文句なしです。
アルバムの構成としては、'Heros And Villians','Surf's Up','Good Vibrations'の3曲が大きな柱になっています。
'Heros And Villians'は"Pet Sounds"の'Sloop John B'を思わせる元気印の曲ですが、アルバムの前半部分を支配するテーマ曲のようになっています。このアルバムの特徴としてある曲の主題が繰り返し別の曲で使われたりして、全体として組曲のようになっています。
'Surf's Up'はBrianの浮遊感のあるメロディラインが美しく、魅力的ですが、同時にどこか陰鬱なムードを感じさせます。曲のテーマでもありますが、「サーフィンは終わった」との言葉通り、60年代前半の楽しいロックンロールの時代が終わって、芸術としてより成熟し、どこか腐敗も感じさせるようになったロックという音楽を愛おしむ、そんな雰囲気のある名曲と思います。
'Mrs. O'Leary's Cow'はよくぞこの"SMiLE"にも収録してくれたと言いたくなる変態的な曲です。やっぱりこんな曲がなければ"SMiLE"がどうして完成しなかったのか、わからないですから。The Beach Boysのビデオ作品"An American Band"に、実際に消防士の帽子をかぶったメンバーの姿が出てきますが、ヤクをやり、ハイになったインスピレーションでサイケデリックな表現を追求し、その行為自体にBrianを含めたみんなが疲れていった、そんな状況を窺い知ることができるトラックと思います。この曲が第47回グラミー賞で"Best Rock Instrumental Performance"を受賞していたのには驚きました。
'Good Vibrations'は大ヒット曲です。テルミンの使用による不思議な音色や、チェロの重低音を効果的に使用したプログレッシブな印象の曲ですが、"SMiLE"セッションに参加した女性ベーシストが「気づく人は少ないけれど、この曲はジャズよ」と言っていたのには驚きました。確かに、"I'm thinking of good vibrations,..."のメロディーラインはジャズのベースランニングそのものです。全然気づきませんでした。
なお、nakaQの持っている"SMiLE"の海賊盤には15分近くにおよぶ"Good Vibrations"が収録されています。次から次へとバックの演奏が変わる一大絵巻といった趣の大曲ですが、これは結局完成せずというか、まあ完成するはずもなかったと思いますが、このあたりnakaQは、The Beach Boysの"SMiLE"はやはり永遠の謎として60年代に封印されたまま、という印象を抱いてしまいます。
nakaQ評価:★★★★★
Brian Wilson "SMiLE"(♪全曲試聴可)

曲目リスト
1.Our Prayer / Gee
2.Heroes and Villains
3.Roll Plymouth Rock
4.Barnyard
5.Old Master Painter / You Are My Sunshine
6.Cabin Essence
7.Wonderful
8.Song For Children
9.Child Is Father of the Man
10.Surf's Up
11.I'm In Great Shape / I Wanna Be Around / Workshop
12.Vega-Tables
13.On a Holiday
14.Wind Chimes
15.Mrs. O'Leary's Cow
16.In Blue Hawaii
17.Good Vibrations


